愛国行進曲

見よ東海の 空明けて

旭日高く 輝けば

天地の生気 溌剌と 

希望は踊る 大八州

おお晴朗の 朝雲に

そびゆる富士の 姿こそ

金甌無欠 揺ぎなき

我が日本の 誇りなれ

 

海行かば

海行かば 水漬くかばね

山行かば 草むすかばね

大君の 辺にこそ死なめ

かえりみわせじ

 

起床喇叭

「起きろ起きろみんな起きろ、起きないと聯隊長に叱られる」

タッタ ター、 トット トー、 タッタ タッテ ター

テッテ テッテ チッテ チッテ トット トット ター

 

空の神兵

藍より蒼き 大空に 大空に

たちまち開く 百千の

真白き薔薇の 花模様

見よ落下傘 空に降り

見よ落下傘 空を征く

見よ落下傘 空を征く

 

世紀の華よ 落下傘 落下傘

その純白に 赤き血を

捧げて悔いぬ 奇襲隊

この青空も 敵の空

この山河も 敵の陣 

この山河も 敵の陣

 

空の勇士

恩賜の煙草を いただきて

あすは死ぬぞと 決めた夜は

広野の風も 腥く

ぐっと睨んだ 敵空に

星が瞬く 二つ三つ

 

すわこそ征けの 命一下

さっと羽ばたく 荒鷲へ

何を小癪な 群雀

腕前見よと 体当たり

敵が火を噴く 墜ちてゆく

 

月月火水木金金

朝だ夜明けだ 潮の息吹き

うんと 吸い込む

あかがね色の

胸に若さの 漲る誇り

海の男の 艦隊勤務

月月火水木金金

 

赤い太陽に 流れる汗を

拭いて にっこり

大砲手入れ

太平洋の波、波、波に

海の男の 艦隊勤務

月月火水木金金

 

私のラバさん

わたしのラバさん  酋長の娘

色は黒いが  南洋じゃ美人

 

赤道直下 マーシャル群島

ヤシの木陰で  テクテク踊る

 

踊れ 踊れ 踊らぬ者は

誰が お嫁に もらうものか

 

勝利の日まで

丘にはためく あの日の丸を

仰ぎ眺める 我等の瞳

何時かあふるる 感謝の涙

燃えて来る来る 心の炎

我等はみんな 力の限り

勝利の日まで 勝利の日まで

 

山で斧ふる おきなの腕も

海の若者 櫓を漕ぐ腕も

町の工場の 乙女の指も

今日も来る来る お国のために

我等はみんな 力の限り

勝利の日まで 勝利の日まで

 

上海だより

拝啓ごぶさた しましたが

僕もますます 元気です

上陸以来 今日までの

鉄の兜の 弾の痕

自慢じゃないが 見せたいな

 

極寒零下の 戦線は

銃に氷の 花が咲く

見渡す限り 銀世界

敵が頼みの クリークも

江南の春 未(ま)だしです

 

太平洋行進曲

海の民なら 男なら

みんな一度は 憧れた

太平洋の 黒潮を

ともに勇んで ゆける日が

きたぞ歓喜の 血がもえる

 

今ぞ雄々しく 大陸に

明るい平和築くとき

太平洋を のりこえて

希望涯ない 海の子の

 

意気を世界に 示すのだ

 

日本陸軍

天に代わりて 不義を討つ

忠勇無双の わが兵は

歓呼の声に 送られて

今ぞ 出で立つ 父母の国

勝たずば 生きて 還らじと

誓う 心の 勇ましさ

 

或いは草に 伏し隠れ

或いは水に 飛び入りて

万死恐れず 敵情を

視察し帰る 斥候兵

肩にかかれる 一軍の

安危はいかに 重からん

 

(出征兵士の見送りの行進の際、小旗を振り歌った)

 

 

天長節

きょうのよき日は おおきみの

生まれたまいし よき日なり

きょうのよき日は みひかりの

さし出たまいし よき日なり

ひかりあまねき 君が代を

いわえ諸びと もろともに

めぐみあまねき 君が代を

いわえ諸びと もろともに

 

(天皇陛下のご誕生を祝う学校の式典で全生徒が合唱した)

 

隣組

とんとん とんからりと 隣組

格子をあげれば 顔なじみ

回してちょうだい 回覧板

知らせられたり 知らせたり

 

とんとん とんからりと 隣組

あれこれ面倒 味噌醤油

ご飯の炊き方 垣根越し

教えられたり 教えたり

 

 

愛馬行進曲

くにを出てから 幾月ぞ

ともに死ぬ気で この馬と

攻めて進んだ 山や河

とった手綱に 血が通う

 

昨日陥した トーチカで

今日は仮寝の たかいびき

馬よぐっすり 眠れたか

明日の戦は 手強いぞ

 

紀元二千六百年

金鵄輝く 日本の

栄ある光 身にうけて

いまこそ祝え この朝

紀元は二千六百年

あゝ一億の 胸はなる

 

歓喜あふるる この土を

しっかと我等 ふみしめて

はるかに仰ぐ 大御言

紀元は二千六百年

あゝ肇国の 雲青し

 

軍艦

守も攻めるも 黒鉄の

浮べる城ぞ 頼みなる

浮べるその城 日の本の

皇国の四方も 守るべし

真鉄のその艦 日の本に

仇なす国を せめよかし

 

石炭の煙は 大洋の

竜かとばかり 靡くなり

弾丸撃つひびきは 雷の

声かとばかり どよむなり

万里の波濤を 乗り越えて

皇国の光 輝かせ

 

湖畔の宿

山の淋しい 湖に

ひとり来たのも 悲しい心

胸のいたみに たえかねて

昨日の夢と 焚きすてる

古い手紙の うすけむり

 

水にたそがれ せまる頃

岸の林を しずかに行けば

雲は流れて むらさきの

薄きすみれに ほろほろと

いつか涙の 陽がおちる

 

出征兵士を送る歌

わが大君に 召されたる

生命はえある 朝ぼらけ

たたえて送る 一億の

歓呼は高く 天を衝く

いざ征け つわもの 日本男児

 

華と咲く身の 感激を

戎衣の胸に 引き緊めて

正義の軍の 行くところ

たれか阻まん その歩武を

いざ征け つわもの 日本男児

 

鐘の鳴る丘

緑の丘の 赤い屋根

とんがり帽子の 時計台

鐘が鳴ります キンコンカン

メーメー子山羊も 啼いてます

風がそよそよ 丘の家

黄色いお窓は 俺らの家よ

 

緑の丘の 麦畑

俺らが一人で いる時に

鐘が鳴ります キンコンカン

鳴る鳴る鐘は 父母の

元気でいろよと 言う声よ

口笛吹いて 俺らは元気

 

戦友

ここは御国を何百里 はなれて遠き満州の

赤い夕日に照らされて 友は野末の石のした

 

思えば悲し昨日まで まっさき駈けて突進し

敵をさんざん懲らしたる 勇士はここに眠れるか

 

誰か故郷を想わざる

花摘む野辺に 日は落ちて

みんなで肩を くみながら

唄をうたった 帰りみち

幼馴染の あの友この友

ああ 誰か故郷を 想わざる

 

ひとりの姉が 嫁ぐ夜に

小川の岸で さみしさに

泣いた涙の なつかしさ

幼馴染の あの山この川

ああ 誰か故郷を 想わざる

 

日の丸行進曲

母の背中に ちさい手で

振った あの日の日の丸の

遠いほのかな 思い出が

胸に燃えたつ 憂国の

血潮の中に まだ残る

 

梅に桜に また菊に

いつも掲げた 日の丸を

光仰いだ 故郷の家

忠と孝とを その門で

誓って伸びた 健男児

 

兵隊さんよ ありがとう

肩を並べて 兄さんと

今日も学校へ 行けるのは

兵隊さんの おかげです

お国のために 戦った

兵隊さんの おかげです

 

夕べ楽しい ご飯時

家内揃って 語るのも

兵隊さんの おかげです

お国のために傷ついた

兵隊さんの おかげです

 

兵隊さんよ ありがとう

兵隊さんよ ありがとう

 

僕は軍人大好きだ

僕は軍人大好きだ

いまに大きく成ったなら

勲章付けて剣下げて

お馬に乗って

ハイ ドウドウ

 

旅の夜風

花も嵐も 踏み越えて

行くが男の 生きる道

泣いてくれるな ほろほろ鳥よ

月の比叡を 独り行く

 

加茂の河原に 秋長けて

肌に夜風が 沁みわたる

男柳が なに泣くものか

風に揺れるは 影ばかり

 

●ハイケンスのセレナーデ

大東亜戦争も中盤になった頃、前線の勇士への慰問放送があった。当時放送局は日本放送教会ただ一局、今風に言えばゴールデンタイムに兵隊さんへの激励と感謝の気持ちをこめた銃後の人々の言葉と歌謡曲、浪曲、落語などが盛り込まれた番組だった。実際に戦地の兵士がこの放送を聞くことが出来たのかは分からないが、子供心には届いていると思っていた。オープニング曲がハイケンスのセレナーデだったが、今なおこのメロディーは耳の奥に残っている。